私大の中でもトップクラスの難度を誇る早稲田大学の入試ですが、中でも国語の問題は抽象的な内容や、受験生には馴染みの薄いテーマが出題される傾向にあり、高い読解力やスピード、正確な知識が求められます。こちらのページでは、特に社会科学部を目指す受験生や保護者の方に向けて、国語の試験の出題傾向をご紹介いたします。

出題形式と試験時間

出題科目は、早稲田大学の他の学部と同様、「国語総合」「現代文B」「古典B」です。2019年から2021年まで3年連続で、評論文を主とした現代文と、現代文・古文・漢文の融合文の大問2題での出題が続いています。文章量は、現代文が3000〜4000字程度、融合文が2500〜3000字程度と他の学部と比較すると少なめではありますが、試験時間が60分と短いため時間配分に注意しつつ解き進める必要があります。

出題内容と設問の特徴

現代文は言語・法律・労働問題など幅広いジャンルが出題されますが、中でも社会科学部ならではの問題として、近・現代社会の抱える問題について論じた文章が多いのが特徴です。融合文に関しても、中心となるのは物語文や歌論を題材とするものですが、出典となる古典文学の書かれた時代は中世から近世まで多岐にわたるため、偏りのない学習が求められます。また、漢文に関する問題が出されることや、文学史などの知識が要求される問題も含まれることから、知識分野に関しても対策を欠かすことができません。設問の形式は全てマーク式の記号選択で、文章読解に関しては傍線部の内容説明、空欄補充、本文全体の内容合致問題など、知識分野からは漢字、語句の知識、文法、文学史などが多く出題される傾向にあります。

現代文 文章の傾向

早稲田大学の国語は一般的に抽象度が高く「読みにくい」文章が多く出題されることが特徴として挙げられますが、それは社会科学部も例外ではありません。例えば2021年に行われた入試では、明治時代の文字教育について論じた文章が出題されましたが、本文中に当時の新聞記事の引用文や、現代とは異なる表現が豊富に含まれたいたことから、読解に苦労した受験生も多かったことと思われます。また、2020年には民法における個人の捉え方の変遷をめぐる文章が出題されましたが、こちらも抽象的な内容が多く、受験生にとっては「とっつきづらい」ものでした。以上のことから、早稲田大学 社会科学部の現代文は受験生に高度な読解力を要求するものであることがお分りいただけたのではないでしょうか。また、このような難度の高い文章では、要求される語彙のレベルも当然難しいものになってきます。このように、早稲田大学 社会科学部攻略のためには高度な読解力・語彙力の習得が欠かせません。

現代文 設問の特徴

上でも述べた通り、早稲田大学 社会科学部の現代文の出題形式は、全問マーク式の記号選択で、主に漢字、空欄補充、傍線部の内容説明、因果関係の読解、内容合致に関する問題が出題されます。漢字は例年、本文中にカタカナで示された漢字と同様の字を用いた熟語を選択する形式で出題されています。本文中の熟語のみならず選択肢で出題される熟語はどれも基本的な難度で、書き取り問題などでもよく出題されるものばかりなので、ここでは確実に得点を重ねたいところです。

また、空欄補充問題も毎年複数出題されます。内容は接続後補充などの文章構造に関するものから、空欄部前後の文脈に即して象徴的な表現を選択する文脈理解に関するものまで多岐に渡りますが、いずれも空欄部周辺の精読が必要不可欠であることは間違いありません。上の二つの設問が比較的得点しやすい分野であるのに対して、出来不出来が最も分かれるのが設問の大半を占めている傍線部理解に関する問題であると言えるでしょう。それぞれの設問には紛らわしい選択肢が含まれていることも多いため、傍線部内の語句やその周辺の論理展開をしっかりと把握した上で、一つ一つの選択肢を比較・検討する必要があります。

また早稲田大学 社会学部の特徴として、複数の選択肢の中から「適切ではないもの」を選ぶ問題は、表現だけを追う表面的な読解では対処することができません。そのため、本文中で述べられている因果関係や、本文・選択肢の表現の意図をきちんと理解しようとする姿勢が重要になってきます。一方、上で述べたように試験時間が短いことや、大問2の融合文に時間が取られやすいことから、こちらの大問であまり時間をかけすぎることはおすすめできません。

以上のことから、文章の大意を手早く掴みつつ、問題を解く際には各傍線部や選択肢の内容を精査していく、というように速読と精読のバランスのとれた学習が求められます。

融合文 文章の傾向

大問2では、例年古文や短歌・俳句とそれに関する解説文が交互に出てくる形式の融合文が出題されています。設問中にも、本文に関連する漢文や漢詩に関する問題が含まれていることから、現代文の読解力だけでなく古文や漢文の知識、内容把握能力などが求められる「総合力」重視の問題であると言うことができます。本文で扱われる題材は中世から近世まで幅広く、日頃からさまざまな古典文学作品に触れておく必要があります。また、求められる知識も口語文法から語句の知識、漢文の返り点・構文に関する知識など多岐にわたるため、学習に偏りが出ないようにすることがポイントです。

融合文 設問の特徴

上記のように幅広い知識が要求されるのが特徴の早稲田大学 社会科学部の入試ですが、求めらる知識のレベルも分野によって大きく異なります。
例えば、2020年から2年連続で出されている品詞の活用に関する問題や、2019年に出されていた「れる・らるる」の識別のような問題は早稲田大学に限らずさまざまな大学の学部学科で頻出のものであるため、確実に得点につなげたいところです。

同様に、古文単語の知識が単体で問われている問題や文学史、短歌・俳句の表現技法に関する問題なども、他大学の過去問や参考書なっどでよく見かけるような受験生にとっては比較的なじみの深いものであるため、さほど苦労するものではないと言えます。

一方で、漢文に関する問題は難度の高いものが多く、単純な知識だけでは太刀打ちできません。設問の漢文・漢詩と本文を組み合わせて理解する力や、身につけた構文・語句に関する知識を文脈に即して適切に使い分ける能力が求められているため、問題演習を通してより多くの漢文・漢詩に触れていくことが重要です。

また、古文や漢文に関する問題であっても、内容理解を図る形式の読解問題は現代文と同水準の読解力が求められ、選択肢中にも紛らわしいものが多く含まれる点が特徴ですので、傍線部前後の関係をきちんと把握しつつ読み進める慎重さは必要です。以上のことから、融合文は現代文に比べて知識分野の出題は多いものの、単なる知識だけでは解くことのできない難度の高い読解問題も含まれているため、時間をかけながら筆者の論旨を丁寧に理解する必要があると言えるでしょう。